Dries Van Noten:鮮やかな色彩の舞はこれからも愛され続ける
フランスは現地時間2024年6月22日、パリ郊外の倉庫である伝説的デザイナーのラストコレクションが行われた。名は、Dries Van Noten(ドリス・ヴァン・ノッテン)。ブランドの名も冠している。ドリスは、アントワープ王立芸術学院出身のベルギー人デザイナーだ。
アントワープ王立芸術学院で優秀な成績をおさめ、「アントワープ・シックス」のひとりと称された彼は、1986年にブランド「Dries Van Noten」をオープンした。鮮やかな色彩や端正なデザインは人々の心をつかみ、ラグジュアリーかつリアルクローズなクリエイションには、絶大な信頼が寄せられている。
そのデザイナーであるドリスは、2025年春夏メンズ・コレクションで惜しまれながら引退した。彼が世界にうみ落としたクリエイションとともに、彼の感性や歩んできた軌跡を辿っていこう。
Dries Van Noten(ドリス・ヴァン・ノッテン)
ドリスは、自身の引退に際して、Instagramにファッションへの愛とすべての人々に感謝のメッセージを残した(Instagram)。そのメッセージは愛と光に溢れ、まさに祝福の体現者のよう。彼を彼たらしめる根源を探ってみたい。
デザイナー:ドリス・ヴァン・ノッテン─©Dries Van Noten Official
2025SSのフィナーレで登場したドリス ─ @driesvannoten
美しい街並みのなかで
1958年、ベルギー北部にあるアントワープ(オランダ語ではアントウェルペン)に生を受ける。
アントワープは、オランダのロッテルダムに続くヨーロッパの大きな貿易港を持つ街だ。造船や植物油の加工、ダイアモの研磨など、とくに工業で栄えた土地で、ファッションの都市として有名なパリやアルステルダムなどとの交易も盛んに行われている。
一方、芸術の面でも王立美術館やノートルダム大聖堂、プランタン・モレツス印刷博物館にルネサンス様式の建築と、歴史的な建築物が多く残る街としても知られている。
ノートルダム大聖堂─西側ファサード(正面)とアントワープの街並み© Notre-Dame de Paris, site officiel
工業による盛んな交易と、伝統的な雰囲気が色濃く残るこの街で、テーラー一家の3代目として生まれたのが、後に世界的なデザイナーとなるドリス・ヴァン・ノッテンだ。
10代のころから家族に同行し、パリやミラノへ服の買い付けに赴いていたのだそう。彼の誠実なテーラリングは、幼いころから両親の仕事を見てしみ込んだ、テーラーの血の表れなのかもしれない。
アントワープの寵児として
1977年、ドリスは18歳でアントワープ王立芸術学院のデザインコースに入学する。アントワープ王立芸術学院は、1663年に設立されたヨーロッパで最も歴史あるアートアカデミーの一つだ。
一般的にファッションの3大アカデミーのひとつと呼ばれており、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズ芸術大学、ニューヨークのパーソンズ美術大学と並んで、ファッションの世界を志す者の憧れとなっている。
ドリスはアントワープ王立芸術学院在学中にフリーランスで子供服のデザイナーをしていたが、卒業後はメンズウェアを専門にデザインを始める。
このとき、後に伝説となって語り継がれるアントワープシックスが一堂に会した。当時、ロンドンで行われたファッションウィークの「ブリティッシュ・デザイナーズ・ショー」という展示会に、アントワープ卒業生の6名が、バン一台に作品を詰めて乗り込んだのだ。
アントワープシックスとは、1990年代にファッション業界を盛り上げた伝説のデザイナー6人を指す。当初は、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dries Van Noten) 、アン・ドゥムルメステール(Ann Demeulemeester)、ウォルター・ヴァン・ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)、ダーク・ヴァン・セーヌ(Dirk Van Saene)、ダーク・ビッケンバーグ(Dirk Bikkembergs) 、マリナ・イー(Marina Yee)の6人を指していた。
後にマリナ・イーが引退し、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)が加わり、アントワープシックス(アントワープセブンとも)を指すようになった(Vogue Japan)。
当時アントワープシックスについて特集された雑誌記事 ©︎Google Arts&Culture
旅のはじまり ─ Dries・Van・Nottenをオープン
ブリティッシュ・デザイナーズ・ショーのあと、ドリスはメンズウェアだけでなく、ウィメンズウェア、シューズと続々と範囲を拡大していく。
そして1989年に、アントワープではじめてのブティック「Het Modepaleis(へット・モードパレス)」をオープンさせた。
へット・モードパレス©Dries Van Noten Official
もともとドリスの父親は、息子に一家のビジネスの後継ぎとしての道に進むことを望んでいた。しかしドリスは財務や経営ではなく、デザイナーになる道を選んだ。
父親に「自分自身で財政を支えなければいけない」と言われたドリスは、父親の言葉から勤勉と自立の精神を学び、経済的に誰にも頼らず独立を果たす。そのフィロソフィーは、現在に至るまで広告やキャンペーンを大々的に使用しないというマーケティングにも表れている。
Het Modepaleis ©Dries Van Noten
リュクスとリアルクローズの融合 ─ ドリス・ヴァン・ノッテンの世界観
素材、テーラリングのラグジュアリーさ、色合いのフォークロア(民俗学、民間伝承)感、もしくはエスニック(異国情緒、異国風)な雰囲気が特徴だと言われるドリスのクリエイション。
しかし彼自身はフォークロアやエスニックと評されるのを好んでおらず、あくまでも、「相容れないように見える要素、色の組み合わせ(Vogue Japan)」を意識している。
個人的かつ主観での美しさを大切にしており、「美しさ」の主観性への探求が、彼のクリエイションに現れているのだ(Dries Van Notten Official)https://www.driesvannoten.com/en-us/pages/biography。
また、ドリスの庭が、彼にとってインスピレーションの源となる。一見斬新に見える色の取り合わせも、ドリスの瞳が見た自然の美しさが反映されているのだ。新鮮で、でも無理のないナチュラルな調和。とくに後半に紹介する香水の瓶には、その世界観が存分に表れているので必見だ。
ミニマリズムの流行とドリス・ヴァン・ノッテン
1990年代、ファッションの世界はミニマリズムの流れにあった。過剰でパワフルなショルダーラインやカラフルな装飾が流行だった1980年代の反動が訪れたのだ。
「ミニマル(最小限の)」ファッションのムーブメントを起こしたのは、ヘルムート・ラング(Helmut Lang)やジル・サンダー(Jil Sander)。特にヘルムート・ラングは、非装飾的かつベーシックなクリエイションによって、ありのままの自分と向き合い、そのなかで個性を見出すことの重要性を表現したのである。
ところがドリスのクリエイションは、シンプルさが際立つトレンドのなかに埋もれることはなかった。
Dries Van Noten 1998 S/S ©models.
黒色や茶色などの落ち着いた色味を使いつつも、繊細な花模様や装飾、透け感のある素材とのレイヤードなどを駆使してドリスらしさがにじみ出ている。トレンドと自身の美学のバランスを見事に調合してみせた。
着実に重ねるコレクションと信頼
嫌いなものからアイディアを思いつく。意外性のあるもののほうが好きなんだ(LINDA WATSON『FASHION VISIONARIES』)
軽やかで端麗なクリエイションが特徴のドリスのアイデアは、意外なことにマイナスから生まれる。しかし、だからこそ嫌いなもの、相反するものを遠ざけない柔軟さや余裕、寛容さがクリエイションに良い影響を与えるのだろう。
ここからは、ドリスの歴代コレクションと当時のトレンドをあわせて概観しつつ、彼の美学がどのようなところに現れているのか見ていこう。
Dries Van Noten 2002 Spring Ready to Wear©VOGUE-Pinterest@Vogue Runway
2002年、春の Ready to Wearコレクション。柔らかな色遣いが心を和ませる。同系色のなかでも異なる素材や柄が用いられているが、決してくどくない。
「主張の強い服を創りたいとは思わない(LINDA WATSON『FASHION VISIONARIES』)」と述べるように、20年経っても着られる、時代に対してニュートラルなクリエイションはこの時からすでに健在だ。
そして上品なラグジュアリーさを保ちつつも、決して着ている人間を過度に装飾することはない。
My joy is to create a garment that fuses and balances beauty, craft and function, a garment that can perform well and continue in time to become part of life’s story. I enjoy juggling with colours, textures and light in a way that evokes rather than provokes.(私の喜びは、美しさ、工芸性、機能性を融合させ、バランスをとった服、そしてうまく機能し、人生の物語の一部となる時間を超えて続くことができる服を作ること。)Dries Van noten Official
ドリスは、クリエイションを通して「人生の物語の一部となる時間を変えて続くことができる服」をつくりたいと述べる。言葉で述べるのは簡単だが、普遍的な衣服をつくることは容易くない。けれど、それを証明したドリスとドリスのクリエイションは、誠実だ。
I enjoy juggling with colours, textures and light in a way that evokes rather than provokes. (私は、色、質感、光をジャグリングして、挑発するのではなく、呼び起こすような方法で楽しんでいる。)Dries Van noten Official
Dries Van Noten 2013-2014 A/W - ノームコアにきらめきを
2010年前後から、ノームコアのスタイルがトレンドに。2020年以降もしばしば耳にするワードだ。「ノームコア」という言葉自体は、2013年に生まれたという説がある(VOGUE JAPAN)https://www.vogue.co.jp/fashion/article/us-vogue-core-fashion-explained。当時のドリスのコレクションを見る前に、まずノームコアについて少し触れたい。
ハリー・スタイルズ(Harry Styles)とヴィクトリア・ベッカム(Victoria Beckham)2013年 ©ELLE
トレンド予測を行う組織K-HOLEによると、「ノームコア(Normcore)」とは「普通(Normal)」と、「究極(Hardcore)」を組み合わせた造語だ。本来は、「自己アイデンティは自分のなかにある、だからこそあえて外見で表現することはない」という考えのもとにあるノームコアだが、「究極のシンプル」という意味で用いられることが多い。
セリーヌ - 2011 Pre fall - VOGUE - © Courtesy of Celine2011
同時期に、Celine(セリーヌ)のクリエイティブ・ディレクターであるフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が、寡黙でシンプル、実用的なクリエイションを発表し、ノームコアの流行に一躍買った。
そんなノームコアがトレンドの時代に、ドリスはどんなコレクションを発表していたのだろう。
Dries Van Noten 2013-14 A/W ©Fashion Press
このコレクションは、1930年代に人気を博した2人のダンサー、フレッド・アステア(Fred Astaire)とジンジャー・ロジャース(Ginger Rogers)からインスピレーションを得たコレクションだ。
2013-14年の秋冬コレクションは、全体的にブラックが目立つクリエイションが多い。黒はとことん黒く、明るい色はとことん明るく。そのメリハリが特徴だ。ノームコアに火が付き始めるころ、ドリスはノームコアの究極的なシンプルさを感じさせつつも、そこに一粒のきらめきを加えることを忘れない。
レイヤードしたパンツや、銀糸がかがやくジャケット、アシンメトリーの長い毛足でラグジュアリーなトップス。肩ひじ張らないシルエットのシャツが緊張感を程よくほぐしている。
Dries Van Noten 2013-14 A/W ©Fashion Press
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースのダンスシーン SWING TIME ('36): “Pick Yourself Up” - YouTube
フレッド・アステアとジンジャー・ロジャースが、ドリスの服を、フリンジをはためかせながら踊るところを想像せずにはいられない。ミュージカルや舞台にひっぱりだこのふたりがもつ華やかさと、軽やかなダンスがドリスのクリエイションのインスピレーションとなった。
ノームコアの流行りにあっても、ドリスの「美への主観性」は揺らぐことなく現れている。
Dries Van Noten 2017 S/S - 19世紀の詩人とモダンの融合
2017年のコレクションも、当時のトレンドと合わせて分析してみよう。
2017年春夏コレクションでは、19世紀の詩人でテキスタイルデザイナーのウィリアム・モリス(William Morris)にインスピレーションを受けたクリエイションが発表された。
Dries Van Noten 2017 S/S Mens - ©FASHION PRESS
モリスは、アーツ・アンド・クラフツ運動を行った人物としても知られている。
アーツ・アンド・クラフツ運動とは、19世紀の産業革命によって変化した社会のなかで起こった芸術活動。産業革命の機械化によって失われつつある手工芸や芸術的な装飾とその技術の復興を目指す運動を指す。この運動を主導したひとりがモリスだ。
William Moris(1848~1856)- ©WILLIAM MORIS GALLERY
ウィリアム・モリス「小鳥」1878年 ジャカード手織り、ウール 製作社:モリス商会 - ©William Moris ウィリアム・モリスの世界
モリスは、失われる恐れのあったクラフツマンシップを重要視し、タイルやステンドグラス、家具、装飾画などを手仕事で行うモリス商会を立ち上げた。
ドリスは、現代技術や生活とアーツ・アンド・クラフツ運動の思想をミックスさせ、過去と現在を行き来するクリエイションに仕上げた。
Dries Van Noten 2017 S/S Mens - ©FASHION PRESS
全体的にアースカラーが目立つコレクション群。彩度の似た色合わせだが、色同士が埋もれることなく調和している。モリスのテキスタイルと同様に丁寧に配置された色バランスが絶妙だ。
Dries Van Noten 2017 S/S Mens - ©FASHION PRESS
モリスが手仕事の技術を後世に残そうとしたように、さまざまな色をふんだんに用いて織り込んだニットや美しいカッティングのパンツなど、手が込んだクリエイションが散見される。もちろん上品なきらきらを仕込むのもドリスのお家芸だ。このきらめきに魅了されたカルト的なファンも多い。
変わらず洗練されたデザインで魅せるドリス。2017年春夏コレクションではモダンさが際立っていたが、実は同時期のトレンドはこれとは異なっていた。
2017年のトレンドは「ビッグシルエット」。きっかけは、2014年にデムナ・ヴァザリア(Demna Gvasalia)がスタートしたVETEMENTS(ヴェトモン)。その後、2015年にBalenciaga(バレンシアガ)のアーティスティック・ディレクターとして発表したコレクションがビッグシルエットを後押しした。
BALENCIAGA 2017 S/S Mens - ©FASHION PRESS
BALENCIAGA 2017 S/S Mens - ©FASHION PRESS
ショルダー部分が、実際の肩よりも大きなつくりになっている。後には裾をするような長めのレングスかつ太いボトムが若者の間で流行する。
そのなかにあっても、ドリスのコレクションはぶれることなく彼の美学に則ったクリエイションを発表し続けていることが分かるだろう。
Dries Van Noten 2020 A/W - パンキッシュとウイルスと革命と
2020年、歴史に残るパンデミックが発生した。その渦中でファッション業界も大きな変化が求められていた。2020年5月12日に、「ファッション業界への公開書簡(Open Letter to the Fashion Industry)」という書簡が公開されたのである。
これは、業界が抱える環境負荷などの問題を訴えたもので、ラグジュアリーブランドやデザイナーたちが連名で公開したものだ。この公開書簡の旗振りを行ったのがドリスなのである。
ブランドによっては年に**4回から6回コレクションの発表を行う**。この時にかかるデザイナーや被雇用者、環境への負担は大きなものだ。
Dries Van Noten 2020-21 A/W Mens - Instagram @diresvannoten
「一過性ではなく、より長い間価値を持ち続ける商品とは何か」、「あらゆるシーンに対応できるかどうか」というように、これまで以上にデザインの本質を考えることが重要だと考えます。(VOGUE JAPAN)
書簡を発表した際、インタビューに答えたドリスはこう述べた。その後公開された、2020年ウィメンズの秋冬コレクションは、反骨精神・パンクのお膝元、イギリスのナイトガールから着想を得たコレクションである。ファッション業界への思いも感じる力強いコレクションとなった。
Dries Van Noten 2020-21 A/W Wemens -© FAHION PRESS
Dries Van Noten 2020-21 A/W Wemens by Jam Stoker - Instagram @jamstoker
Dries Van Noten 2020-21 A/W Wemens -© FAHION PRESS
2020A/Wコレクションの制作期間には、まさか驚異のウイルスが世界に蔓延するとは思わなかったかもしれない。だが、書簡の発表やコロナウイルスによる自粛期間を経て、「じっくりと未来について考えるようになりました(VOGUE JAPAN)」と語るドリス。
鮮やかなクリエイションを制作するなかで、ドリスの胸中は如何ほどだったのだろうか。
私たちは別の発表方法を見つけなければならない。制限があるとき、人はそれを問題視することもできるし、とてもポジティブに捉えて受け入れることもできる。それこそ、今の私たちが取り組んでいることだ(WWD JAPAN)
愛と祝祭に包まれたラスト・コレクション
美への主観性を終ぞ追求してきたドリス。ファッションのトレンドに委ねすぎず、けれどもファッション業界の現状に警鐘を鳴らした賢人は、2024年に引退を発表した。
数々のメディアやモデル、セレブリティが言及し、惜しまれながら行われた2025年春夏のメンズコレクションは、愛に包まれたコレクションとなった。
Dries Van Noten 2025 S/S mens -©Dries Van Noten
コレクションの会場ではディナーが振る舞われ、これまでのショー映像を見ながら、参加者は自ら来ているドリスのアーカイブを自慢して和やかな時間を過ごしたという。
Dries Van Noten 2024 S/S mens -© FAHION PRESS
Dries Van Noten 2020-21 A/W Wemens by Jam Stoker - Instagram @jamstoker
暗闇の中に浮かび上がる白銀の道や銀の布地を用いたクリエイションには、幽玄さがある。アウターに葉と花の柄をあしらった方法は、日本の伝統的な「墨流し」というマーブリングの技法を用いているのだそう。まさしく最後のコレクションに相応しい、成熟した雰囲気を感じさせる。
Dries Van Noten 2024 S/S mens -© FAHION PRESS
極限まで洗練されたテーラリングにさりげなく輝く刺繍は、荘厳な雰囲気がある。鮮やかな色と淡い色を組み合わせたルックは、多幸感がある。言葉にしてみるとひとつのブランドから発表されたとは思えないが、これが共存してしまえるのが長年ファッション業界のトップランカーだったドリスの手腕だろう。
最後のコレクションの招待状には「LOVE」の文字があったという。人に愛され、人や社会、ファッションを愛したドリスらしい招待状だ。彼のクリエイションは、これからも愛されながら着用され、受け継がれていく。
ドリス・ヴァン・ノッテンの新たな萌芽
庭とドリス。彼のアイデアの源泉となる55エーカーの庭。@Jackie_Nickerson
ドリスが引退を発表する少し前の2022年春。ドリス・ヴァン・ノッテンは、自身のブランドで初となるビューティ・コレクションを発表し、話題を集めた。
ドリスの庭を彷彿とされるデザインと彼らしいネイチャーの要素がたっぷり詰め込まれた香りは、10人の調香師によるこだわりと職人技が光る。
薬剤師が使うバイアル瓶から着想を得たボトルデザイン。©FASHIONPRESS
ドリス・ヴァン・ノッテンのシグネチャーである薔薇のデザインや、パリにあるドリス・ヴァン・ノッテンのブティックをイメージした香りなど、第一弾とは思えない個性豊かなラインナップが揃った。
ファーストコレクションは全30種+バーム1種。©FASHIONPRESS
リップケースは、ボトムとトップで色合いも柄も異なるデザインで、バッグに忍ばせるだけで心が弾む。テクスチャーはサテン、マット、シアーの3種。唇に優しい配合と好みに合わせた質感が選べる。
2024年に発表された新作コレクション。@driesvannoten
新作コレクションでは、「バジルとシダー」や「カモミールとバニラ」など、ドリスらしい意外な組み合わせの香りを楽しむことができる。
リップカラー・Abstract Red - @driesvannoten
ファッションはもちろん、我々の顔にもドリス・ヴァン・ノッテンは花を咲かせはじめた。
The brand is now blooming. Like in a garden, you decide what to plant; and at some point, it continues to flourish.(このブランドは今、まるで満開の花園のように咲き誇っています。庭に何を植えるか決めるのはあなたたちです。そして、やがてその種は自然と花開き、絶え間なく咲き続けることでしょう。)Instagram - @driesvannoten
感謝と愛を綴った最後の手紙にはこう書かれている。ドリス退任後は、いったいどんな花を咲かせ楽しませてくれるのだろう。そして、我々はドリス・ヴァン・ノッテンの服を着て、どうやって日々に花を咲かせよう。
References
- Dries Van noten - Biography
- Instagram - @driesvannoten
- Notre-Dame de Paris, site officiel
- WILLIAM MORIS GALLERY
- William Moris ウィリアム・モリスの世界
- 美術手帳「「アーツ・アンド・クラフツ運動」と「日常のデザイン」──現代にも通ずるウィリアム・モリスの理想とは?」
- The New York Times
- Google Arts & Culture - EMERGENCE. Tje Antwerp 6+1
- models - Dries Van Noten
- Vogue Japan Dries Van Noten
- VOGUE Runway「Dries Van Noten 2002 Spring Ready to Wear」
- VOGUE JAPAN「いくつ覚えている? セリーヌ、フィービー・ファイロが生んだヒットアイテムの数々。」
- VOGUE JAPAN「ノームコア、バービーコアetc.。頻出するトレンドワード「コア」についての考察。」
- VOGUE JAPAN「ファッションの創造性を奪還せよ! ドリス・ヴァン・ノッテンとトム・ブラウンCEOの提言。」
- VOGUE JAPAN「ドリス ヴァン ノッテン、最後のショー。服づくりに真摯に取り組み続けたデザイナーの愛と祝祭のコレクション【2025年 春夏メンズ速報】」
- Fashion Press「Dries Van Noten 2013-14 A/W 」
- Fashion Press「Dries Van Noten 2017 S/S Mens」
- Fashion Press「ドリス ヴァン ノッテン『ビューティーコレクション』日本上陸!カラフルなデザインの香水&リップスティック」
- WWD JAPAN「ドリス・ヴァン・ノッテンが語るクリエイション 『私たちは立ち止まってはいられない』」
- ELLE JAPON「【61~100位】2013年おしゃれセレブの年間クリックランキング」
- YouTube - SWING TIME ('36): “Pick Yourself Up”
- Japan Knowledge『日大百科全書』─アントウェルペン
- LINDA WATSON『FASHION VISIONARIES』2015( London : Laurence King Publishing)