
AMI PARIS:アレクサンドル・マテュッシが描く、現代フレンチエレガンス
AMI PARIS(アミ・パリス)は、アレクサンドル・マテュッシ(Alexandre Mattiussi)によって2011年からスタートしたブランド。柔らかな色合いやハートモチーフのシグネチャーが印象的で、K-POPアイドルやセレブリティも愛用する。
2011年にデビューしたばかりにもかかわらず、すでにファッションラバーの心を掴んでいるアミ・パリスの歴史や魅力に迫ってみよう。
王道フレンチスタイルからエフォートレスなフレンチスタイルへ
アミ・パリスの魅力は、王道フレンチのエッセンスを持ちながらも、エフォートレスな軽やかさも持ち合わせていることだろう。
このバランスは、アミ・パリスの創設者でありデザイナーのアレクサンドル・マテュッシの手腕によるところが大きい。
アミ・パリスのデザイナー - アレクサンドル・マテュッシ(Alexandre Mattiussi)
アレクサンドルは1980年生まれ。31歳になる2011年に、Givenchy(ジバンシィ)やDIOR(ディオール)などパリの大手メゾンから独立し、アパートの一室でアミ・パリスをスタートさせた。
アレクサンドルがファッションの世界を志したのは14歳のとき。4歳から始めたバレエをやめた当時のジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)、ティエリー・ミュグレー(Thierry Mugler)などの華やかなファッションに惹かれたそうだ。
バレエという舞台芸術との共通点も見出していたというアレクサンドル。ファッションショーはファッションに限らず、それらを披露する演出や音楽などすべてがひとつの芸術として現れる空間だ。アレクサンドルは、そんなファッション世界に感銘を受けていたのだそう。
アミ・パリスの象徴と愛のかたち
アレクサンドルが自身のブランドを立ち上げようと思ったのは「自分の表現したいことを、自分で伝えたいと思ったから」だそう※1。たしかにアミ・パリスのシグネチャーマークひとつとっても、アレクサンドルのいわば「あたたかな美学」が伝わってくる。
ニューヨークにあるアミ・パリスの店舗©Courtesy of Am
2023年ホリデーコレクションのミステリーボックス。ファッションショーへの招待状や交流会の参加資格などが含まれていることも。©Ami Paris
アミ・パリスのロゴ「Ami de Coeur」
アミ・パリスのシグネチャーマーク。アミ・パリスやアレクサンドルの頭文字である「A」とその先端につながるハートがアミ・パリスを象徴している。このロゴは「アミ ドゥ クール(Ami de Coeur)」といい、アレクサンドルが幼少期のころから使っているものだという。
アレクサンドルは「僕の名前のイニシャルでありアルファベットの始まりであるAと、万国共通のハート形というシンプルで明快なデザイン」とインタビューで答えており、「すべての人を包括するフレンドリーなブランドでありたい」という思いのもと、実際アミ・パリスのクリエイションには、このロゴが多く入れられている※2。
「AMI」はフランス語で「友達」という意味。ファッションへの愛、友人への愛、日常への愛などさまざまな愛のかたちがアミ・パリスのクリエイションには込められており、ニットやTシャツ、スウェットシャツといったカジュアルウェアから、バッグやスニーカーなどのアクセサリーに至るまで、Ami Parisのコレクション全体を通して、このロゴがデザインの核となっている。
その親しみのある愛の空気感と普遍性が、ブランドのミニマルかつ洗練された美学と見事に調和しており、多くのファンを魅了するのだ。
デザイナーのインスピレーション
アレクサンドルは「日常に存在するあらゆるもの」がインスピレーションだという。たとえば「流れている音楽」、たとえば「ふと目に留まった壁の色」、たとえば「人との会話※3」。
その視点は非常に多角的で、特定のテーマやトレンドに縛られることなく、アレクサンドルが感じ取った瞬間や感情がそのままデザインに反映されている。
セレブリティやアイドルを魅了するアミ・パリスのタイムレス・ファッション
エイジレスでエレガントなフレンチスタイルが幅広い層に愛されているアミ・パリス。しかし近年では、特にヤングな層に人気があるという。
セレブリティやインフルエンサー、とくにK-POPのアイドルが着用したことでその注目度がさらに高まり、若い世代のファッションアイコンとしての地位を確立した。
ファッション感度の高い次世代のインフルエンサーたちがステージ衣装や日常のスタイリングでアミ・パリスを取り入れることで、そのエイジレスな魅力がより現代的でトレンド感のあるスタイルとして再解釈されている。
とくにロゴ入りのスウェットやニットは、シンプルながらも存在感のあるアイテムとして、SNS上で多くの注目を集めるきっかけとなった。
いまやアミ・パリスはヤングジェネレーションの間で「洗練と親しみやすさを兼ね備えたフレンチシック」の象徴となっている。
M2 -TOMORROW X TOGETHERのヒュニンカイ(左)・ヨンジュン(右)
また、アミ・パリス自身も積極的にK-POPアイドルとコラボレーションしている。2021年には、韓国発のグローバルグループ・ENHYPEN(エンハイフン)がアミ・パリス初のハウスアンバサダーに就任した。
アンバサダー就任に際して公開されたビジュアルでは、アミ・パリスの正統派エレガンスな一面が際立つスタイリングで話題を呼んだ。クラシックなテーラードジャケットやシンプルながら洗練されたシャツ、タイなどをまとったエンハイフンのメンバーたちが、ブランドの持つエレガンスと若々しいエネルギーを見事に体現している。
一方で、フレンチカジュアルとモダンの一面も強調された。アミ・パリスのアイコニックなロゴがあしらわれたフーディーを身にまとったエンハイフンのメンバーたちのリラックスしたビジュアルも登場し、より親しみやすいカジュアルな魅力を打ち出しており、若い世代のライフスタイルにぴったりとフィットしている。
X - エンハイフン・ソンフン(上)ソヌ(下) @enhypenupdates
2024年には、K-POPガールズアイドルグループ・TWICE(トゥワイス)のジヒョ(JIHYO)を起用した。
パリで行われた撮影では、2024年秋冬シーズンのアミ・パリスを象徴するようなドレッシーなスタイルを披露。クラシックなテーラードジャケットやブラックドレス、レースアップシューズが目を惹いた。
コレクションが示すアイコニックなスタイル
K-POPアイドルとのコラボレーションを通じて、グローバルな人気をさらに高めたアミ・パリス。
魅力の核にあるのは、ブランドが提案するモダンでフレンチエレガントなスタイル。
洗練されたクリエイションは、2011年にデビューしたとは思えない貫禄がある。アミ・パリスの印象的なコレクションを振り返りながら、アミ・パリスの世界観を堪能しよう。
Ami Spring 2012 Menswear - アミ・パリスの「力みすぎない」という哲学
メンズウェアからスタートしたアミ・パリス。「華やかさはあるが、力みすぎない」を意識したコレクションでは、コットンやリネンというやわらかさを孕んだ素材を用いてアミ・パリスらしいフレンドリーな空気感をつくりだしている。
一方で、アレクサンドルの色使いの妙も注目したい。多様な色を用いた遊び心のあるクリエイションにもかかわらず、品良くまとまっている。
Ami Spring 2012 Menswear ©Courtesy of AMI Alexandre Mattiussi
Spring 2014 Menswear - 遊び心とリアルクローズの融合
2014年春のコレクションは、アレクサンドルらしさがよく表れているコレクションとなった。空港ターミナルにいる人々に思いを馳せたコレクションでは、トラベルに伴う煩わしさやイライラな側面を軽やかに飛び越え、旅の楽しさを感じさせるアレクサンドルのポジティブなマインドが反映されている。
スーツを着てフライトに備えるビジネスマン、友人を迎えに空港に来た待ち人、鮮やかな色のトップスと絶妙な丈のハーフパンツをあわせたビタミンカラーの衣服に身を包んだ青年はこれから旅行に旅立つのだろうか。
彼らのすがたは、ただの通過点であるはずの空港が、ドラマの一場面にもなり得ることを示している。
日常そのものがインスピレーション源であるというアレクサンドルのデザイン哲学が色濃く表れたリアルクローズなクリエイションだ。そこには、ファッションを通じて人々の日常や旅路に寄り添う、アミ・パリスらしい「フレンドリーさ」が込められている。
Spring 2020 Ready to Wear - アミ・パリスのブラック
VOGUEは、このコレクションを経て「今やフランスのブランドとして確固たる存在感を持つブランドになった※4」と称した。
アレクサンドルは、このコレクションでメインにブラックを取り入れることでシックかつムーディな一面を展開している。また、それまでメンズコレクションを発表し続けてきたアミ・パリスだったが、ウィメンズの要素を加えており、全体的に挑戦をしたコレクションとなった。
「Suddenly Next Summer(次の夏が突然訪れる)」と題されたコレクションに相応しいクリエイションと言うこともできるだろう。
ルック全体を見るのもいいが、アイテムひとつひとつにも注目したい。シャープなトゥのローファーやブラックやピンク、レッドなどのぱっきりとしたカラーのアクセントで輝くゴールドのアクセサリー。
フレンチファッションを彷彿とさせるトレンチコートやブラック&ホワイトのチェックジャケットなどによって、ファッションの都である洗練されたパリらしさが強調されている。
SPRING 2020 READY TO WEAR ©Filippo Fior / Gorunway.com
Fall 2021 Ready to Wear - ファッションへのリスペクト
アミ・パリス10周年のコレクションとなる2021年のレディトゥウェアコレクション。このコレクションでは、アミ・パリスのデザイナーであり創設者でもあるアレクサンドルのファッションへのリスペクトが込められたコレクションであった。
Helmut Lang(ヘルムート・ラング)や Calvin Klein(カルバン・クライン)、そしてCaroline Bessette-Kennedy(キャロライン・ベゼット=ケネディ)などのエレガンスを継承し、オマージュすることによって敬愛を示している。
アミ・パリスの親しみやすいエレガンスとはまた異なったエッセンスが加えられているが、うまく調和させることができる柔軟さも魅力のひとつだろう。
Fall 2021 Ready to Wear©Courtesy of Ami
また、今回のコレクションでは、「ランデヴー」と名付けられた新しいバッグが登場した。
その名前が示す通り、「ランデヴー」はフランス語で「再会」や「出会い」を意味する。コロナ禍の隔離生活や制約のある日々を経て、再び人々が顔を合わせ、つながりを取り戻す瞬間を象徴しているかのようだ。
「ランデヴー」は人々がふたたびつながり、前向きな未来を目指すアレクサンドルのメッセージが込められているのではないだろうか。
Fall 2021 Ready to Wear©Courtesy of Ami
人のぬくもりを感じるようなファッション
アミ・パリスのコレクションは華やかだ。しかし一方ではリアルクローズであり、あたたかみがり、人間味を感じられるファッションでもある。
だからこそSNSで人気を呼び、多くの人を魅了している。
シックな色合いのスタイリングは、エレガントで王道なアミ・パリススタイルと言えるだろう。反対に、パステルカラーやアウトドアブランドのアイテムをあわせたりすることで、よりカジュアルを意識したスタイリングを楽しむことができる。
また、シャツとあわせてスクールライクに落とし込んでもいい。
アレクサンドル・マチュッシが手がけるアミ・パリスは、パリのエスプリを感じさせる洗練されたデザインと、日常に寄り添うリアルな視点が見事に融合している。
その服を身にまとうことで、人とのつながりや日常の小さな喜びを思い出させてくれるのだ。
時代のムードを敏感に捉えながらも、どこか懐かしさと親近感を感じさせるスタイルは、ファッションの本質に立ち返る力を持っているといえるのではないか。
アミ・パリスはこれからも、人々に寄り添い、日常を輝かせるファッションを提案し続けることだろう。
Reference
- - AMI PARIS ofiicial ofiicial
- - AMI PARIS ofiicial ofiicial - Ami’s world
- - ※1 FASHIONPRESS 『【インタビュー】アミ アレクサンドル マテュッシ、友達と“いいね”と言い合えるリアルクローズ』
- - ※2※3 WWD JAPAN「11年目で勢いづく『アミ パリス』 デザイナーとCEOに聞く好調の理由」
- - WWD JAPAN「TWICEのジヒョが『アミ パリス』の2024年秋冬キャンペーンに登場」
- - WWD「EXCLUSIVE: Alexandre Mattiussi Heads to U.S. With First Ami Store in New York」
- - ELLE JAPON「『アミ(AMI)』がホリデーコレクションを発売! ポップアップも開催」
- - ELLE JAPON「ENHYPEN(エンハイフン)が、『アミ(AMI)』初のハウスアンバサダーに就任**!**」
- - YouTube - AMI PARIS ofiicial「ENHYPEN x Ami Paris」
- - VOGUE RUNWAY「Ami Spring 2012 Menswear」
- - VOGUE RUNWAY「Ami Spring 2014 Menswear」
- - ※4 VOGUE RUNWAY「SPRING 2020 READY TO WEAR 」
- - VOGUE RUNWAY「Fall 2021 Ready to Wear」
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