MaxMara:タイムレスなエレガンスを纏う、イタリアンラグジュアリーの象徴

MaxMara:タイムレスなエレガンスを纏う、イタリアンラグジュアリーの象徴

MaxMara(マックスマーラ)は、1951年から続くイタリアを代表するブランド。上質かつ上品なテーラードは、まさしく「ラグジュアリー」の体現者だ。

ほかにも、マックスマーラは、すべての女性を応援するというメッセージのもと、さまざまなキャンペーンを行っている。2024年は、「Remarkable Woman」キャンペーンとして日本からは女優ののん、タレント・モデルのローラ(ROLA)、柔道家の阿部詩が起用された。

また、長らくデザイナーを公にしてこなかったビジネススタイルや、いち早く乗り出したプレタポルテの生産など、独自のビジネススタイルを展開してきた点も特徴的だ。今回は、そんなマックスマーラの歴史に迫ってみよう。

©︎MaxMara

©︎MaxMara

マックスマーラの創設者 - アキーレ・マラモッティ

マックスマーラの歴史は、1951年にアキーレ・マラモッティ(Achille Maramotti)によってスタートする。イタリアのレッジョ・エミリアという文化的に豊かな土地でマックスマーラは花開いた。「マックスマーラ」というブランドの名はマラモッティという姓の一部を用いたといわれている。これは、アキーレが祖母や母親の影響を受けていたからかもしれない。

テーラーを経営する曾祖母、裁縫学校を営む母のもとで

曾祖母は、街でテーラーを経営する人物だったそうだ。母親も裁縫学校を創立しており、ファッション・ビジネスを営む家系にアキーレは生まれた。手作業による縫製が身近にある環境で育っていることが、マックスマーラの質の高いテーラリングやクラシックで繊細なデザインにも表れている。

しかし、アキーレはすぐにマックスマーラの操業をスタートしたわけではない。弁護士として働いており、40代に至ってからファッションの世界に飛び込んだファッション業界では珍しい経歴の持ち主である。

アキーレはとくにビジネスの面でも才覚を表し、オートクチュールが王道であった時代に質の高い既製服(プレタポルテ)へといち早く舵切りを行った人物としても知られている。

アキーレ・マラモッティ ©︎Amazon

アキーレのブランド経営で特徴的なのが、デザイナーをあまり公にしてこなかったことだ。のちに、カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)など有名デザイナーがコートをデザインしていたことが明かされ話題となったが、これはマックスマーラが贈るクリエイションそのものに絶対的な自信があったからに他ならない。

1957-58年に発表された初のコレクション©ELLE JAPON

アキーレがこだわった「101801」コート

曾祖母や母親の影響を受けて、アキーレはトレンドに左右されない上質なコートをマックスマーラのアイコンにした。

1981年にアンヌ・マリー・ベレッタ(Anne Marie Beretta)がデザインした「101801」コートは、現在でも憧れのコートとしてマックスマーラのアイコンとなっている。上質なカシミヤ素材と、オーバーサイズのカッティングが特徴だ。

緻密に計算されたデザインによって、どんな体型の人にもなじんでぴったりとフィットするといわれている。

「101801」コート©MaxMara

マックスマーラの伝統とテクノロジー

マックスマーラがこだわるテーラリングや流麗なデザインを可能にしているのが、マックスマーラの工場である。

1957年に建てられたマックスマーラの工場は、現在は美術館「Collezione Maramotti(コレッツィオーネ・マラモッティ)」として、モダンアートの展示などを行っている。

創業後のマックスマーラを支えた工場が現在は美術館に。今では歴史を紡ぐ場、モダンアートを保存、展示する美術館となっている工場の様子と、現在の「マックスマーラ」を日々生み出している場に迫ってみよう。

マックスマーラ、工場のこだわり

マックスマーラの洗練されたテーラリングは、創業から現在にいたるまで大きな信頼を獲得している。まだオートクチュールが一般的だった時代に「上質な既製服」にいち早くとりくんだマックスマーラが重要視していたのが、既製服でありながら高い質を維持し続けること。

アキーレは、1957年に工場をつくる際から合理的でテクニカルなデザイン様式を意識していたという※1。それゆえ、マックスマーラの工場は、戦後の最も興味深い建築として位置づけられている。

「101801」コートもこの工場で生まれたのだ。

©primi anni Sessanta

マックスマーラの本社。スタッフとラックに並べられたコートが映る和やかな写真©ELLE JAPON

革新性と汎用性のニューデザイン - 生産の場から保存の場へ

2003年、マックスマーラの工場は新たなすがたへと変貌する。この改築は、構想から完成まで約4年の歳月がかかった。

もともとの革新性と汎用性あふれる建築を可能な限り残しながら、美術作品を保存し、展示するのにふさわしい場として生まれ変わるための改修がなされた。

©Cesare Di Liborio

マックスマーラの美学が見られる場所

現在のマックスマーラは、当時の手工業的美学を大切にしながらも現代のテクノロジーを織り込みながら、より高次なクオリティを可能にしている。

マックスマーラの美学のひとつに「一枚の反物から一つのアイテムを完成させる※2」というものがある。コンピュータによって、素材をでき得る限り活かす裁断を可能にしているのだ。

©FRANKIE VAUGHAN

©MaxMara

工場内は、大きくふたつのエリアに分かれている。ひとつは裁断をするエリア。もうひとつは、縫製とプレスを行うエリアだ。もちろん、プレスも職人の手仕事で行われている。

コンピュータによって温度や湿度、照明の明るさが最適になるよう管理された工場の中で、コートが仕上がるまでの約100にもわたる工程が、高い水準で維持されているのだ。

偉大なるデザイナーとコレクションの歴史

マックスマーラの服はマックスマーラから生まれた。

デザイナーではなく、あくまでも「マックスマーラ」にこだわったアキーレ。後にカール・ラガーフェルドやフランコ・モスキーノ(Franco Moschino)、ギー・ポーラン(Guy Paulin)、ドルチェ&ガッパーナ(Dolce & Gabbana)など著名なデザイナーが携わっていたことが明らかとなったが、それでもなお生み出される服が「マックスマーラ」であることにこだわった。

1971年 - カール・ラガーフェルドのケープコート

実はマックスマーラでカールがつくったとされるコレクションの写真はあまり残っていない。その数少ないなかでもしばしば目にするのがグレーのケープコートだ。丸みのあるカラーや緩やかなドレープ、品のあるグレーの色彩が、エレガントなマックスマーラの世界観を体現している。

©W

カールのデザイン画©Uno sketch di Karl Lagerfeld per Max Mara

Fall 2002 Ready-to-Wear

著名なデザイナーの数々がマックスマーラに携わっていたことが明らかになっているものの、一方でその時期やクリエイションが明らかになっているケースは多くないようだ。

2002年、秋のレディトゥウェアではVOGUEのエディターが「イタリアで最も成功したファミリーファッション帝国の基盤をつくった※2」と評している。

デザイナーの移籍が一大トピックになったりと、デザイナーが最も尊重される現代のデザイナー至上主義のトレンドの反対をゆくマックスマーラの哲学は非常に興味深い。

このコレクションは、マックスマーラの象徴であるキャメルのコートの魅力が存分に活かされているといえるだろう。同系色で纏められたスタイリングは、そのひとつひとつに質の高さや普遍的な美しさ、昨今のトレンドでもあったクワイエットなラグジュアリーさが垣間見える。

Fall 2002 Ready-to-Wear©Shoot Digital for STYLE.com

Spring 2008 Ready-to-Wear

2008年春のレディトゥウェアでマックスマーラは新たな一面を見せた。1980年代初頭のストリートファッションをマックスマーラ風に再解釈したクリエイションで、ジャン=ポール・ゴルチエ(Jean-Paul Gaultier)やコムデギャルソン(Comme des Garçons)、ロンドンのロッカースタイルを彷彿とさせるアンドロジナス(両性具有)的な表現から着想を得ている。

それまでのエレガントでいわば女性的なエッセンスのなかに新たな刺激を。評価は肯定的なものに限らなかったようだが、マックスマーラの挑戦を見ることができた印象的に残るコレクションだ。

Spring 2008 Ready-to-Wear©Marcio Madeira

Fall 2013 Ready-to-Wear

マックスマーラと言えばコートと言われて久しいが、1981年の「101801」コートに次ぐ、新たなアイコンコートが発表された。「テディ」と名付けられたコートは、羽織ればまさに可愛らしいテディベアになれるアイテムだ。

柔らかでボリューミーな毛並みを携えながらも、そのシルエットはぼやけることなく非常に美しい。

Fall 2013 Ready-to-Wear©:Yanis Vlamos/InDigitalteam I Gorunway

テディベアコートは、セレブリティやインフルエンサーのこころを鷲掴みにした。テディベアを着るだけで、シンプルな服装でも一気にファッショナブルになる。カシミアとシルク風のファー素材で仕立てられたコートは、一枚でも様になるしアクセサリーやカラフルなスニーカーなどとも相性がいい。

©︎Instagram

Fall 2018 Ready-to-Wear

1980年代から1990年代初頭のミラノは、「パワーウーマン」の空気が漂っていた。それが2018年のマックスマーラにカムバックした。つまりこのコレクションのテーマは「女性の強さ」。

アニマルプリントやレザー、ツイードなど力強さを象徴するようなクリエイションに身を包んだ*ジジ・ハディッド(*Gigi Hadid)やカイア・ガーバー(Kaia Gerber)などのトップモデルが登場した。

© Yannis Vlamos / Indigital.tv

Spring 2025 Ready-to-Wear

マックスマーラは、2024年8月にひとつの大きな決断を下した。正式に毛皮の使用を廃止することを決定したのである。いわゆる、「ファーフリー」だ。

ファーフリーになったからといって、マックスマーラの魅力が衰えることはない。2025年のレディトゥウェアでは、デザイナーのイアン・グリフィス(Ian Griffiths)による知的でユニークなクリエイションをみることができる。

グリフィスは、『Lessons in Chemistry(科学の授業)』という小説およびテレビシリーズから着想を得た。グリフィスは、化学が芸術に比べて文化的に軽視されているという現状に着目し、ピタゴラスの幾何学や古代ギリシャの数学者・ヒュパティアの放物線をマックスマーラのクリエイションに取り込んだのだ。

コレクションでは、マックスマーラが持つやわらかさだけでなく、どことなく硬質なエレガントさを感じさせる。計算されたリブの曲線や、腰のカットアウト、流れるようなドレープが着用者の美を最大限に引き出しているのだ。

Spring 2025 Ready-to-Wear©(Isidore Montag / Gorunway.com

すべての女性をエンパワメントする

その創業から現在にいたるまで、マックスマーラはすべての女性の味方だ。1987年からマックスマーラのデザインチームを統括しているグリフィスは、「その人が今力を注ぎたいことに集中させてあげられるような服※3」を目指しているという。

ゲイの男性として、社会に存在を認めてもらうための苦しみは少なからず理解している。今は結婚の平等も達成されたが、1980年代のイギリスで育った私は、子どもの頃はゲイであることを話すことすら難しかった。この経験は女性に対する共感や想像力を養ってくれたと思う※4。

2024年リゾートコレクション後にモデルたちに囲まれるグリフィス©WWD JAPAN

マックスマーラのフェミニズム的取り組み

マックスマーラは、すべての女性を応援する取り組みを積極的に行っている。「REMARKABLE WOMEN」という理念は、「卓越した女性のためにデザインされたワードローブこそが、ブランドとして大切にしてきた価値観、そしてマックスマーラを身につける人への尊敬の念※5」が反映されているのだ。

その理念が強く反映されているのが「オリンピア」ジャケットだ。肩幅の広いダブルのジャケットのシルエットは、凛とした女性像を表している。

©MaxMara

The Max Mara Jacket Circle

「マックスマーラジャケットサイクル」というインスタレーションでは、マックスマーラが女性とともに歩んできた歴史を垣間見ることができる。

©MaxMara

アキーレのフィロソフィーは、長い歴史を越えて現在まで花を咲かせ続けている。たとえ日々の中で困難に直面しても、マックスマーラの服がそっと寄り添い、あなたを支えてくれるだろう。

その一着の向こうには、凛とした強さと品格を持って生きる人々の姿が浮かび上がり、あたたかな眼差しであなたをつつんでいる。

Reference

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