Kiko Kostadinov:ミニマルで実験的な世界

Kiko Kostadinov:ミニマルで実験的な世界

Kiko Kostadinov(キコ・コスタディノフ)は、ロンドンを拠点に活動するデザイナーが自身の名を冠して創設したブランド。メンズウェアを中心にスタートした同ブランドは、アバンギャルドで機能性を追求するデザインが特徴。さまざまなものからインスピレーションを受け、ユニークなテクスチャーやシルエットを組み合わせることで、ミニマルでありながら実験的な美学を持つ。

アシックス(ASICS)とのコラボレーションスニーカーでブランドの知名度を急速に高めた。2019年、キコはレディースのデザイナーとしてファニング姉妹を起用し、本格的なレディースラインを展開しはじめた。

今回はそんなキコ・コスタディノフのブランドヒストリーと魅力をご紹介。

Kiko Kostadinov

キコ・コスタディノフ©SHOWstudio

1989年、創設者であるキコ・コスタディノフはブルガリアのプロヴディフ市郊外の小さな町で生まれた。2005年、16歳のとき両親と共にロンドン南東部のフォレストヒルに移住。現在でも両親との仲は良好で、キコのスタジオの近くに住んでいるという。父は建設業に従事しており、母はかつて清掃員として働いていたが、現在はスタジオマネージャーとしてキコを手伝っている。

2007年、18歳でアイトール・スループ(Aitor Throup)のもとで1年間のインターンシップを開始する。アイトールは映画『ハンガーゲームFINAL:レジスタンス』『ハンガー・ゲームFINAL:レボリューション』の衣装デザイン、ロックバンドの「カサビアン」や「デイモン・アルバーン」のアルバム・アートワークやPVディレクションなどを務めるアーティスト、クリエイティブディレクター。2012年からは、「New Object Research」を、ロンドンコレクション・メンで発表するデザイナーでもある。

アイトール・スループ

4年後の2011年、キコはロンドン屈指の芸術大学、セントラル・セント・マーチンズ(Central Saint Martins)でファッションデザインの学士号を取得。その卒業コレクションは公式プレスショーに選ばれ、後に業界ウェブサイト、ビジネス・オブ・ファッション(BoF)によってトップ卒業生6人の1人に選ばれた。

その後も数多くのデザインコンペで優勝し、大手ブランドと数多くコラボレーションをしたほか、フォーブス・ヨーロッパの芸術分野における30歳未満の30人の1人に選出されている。

故郷ブルガリアとの絆

レーベル設立直後の短期間を除いて、すべてのコレクションを故郷ブルガリアで製造してきたキコ。手工芸品と衣料品工場を組み合わせた手法で製造されている。現地でのつながりを築く上では、彼の母がキコと故郷を結ぶ重要な役割を果たしてきた。そんな現地の工場の中には旧ソ連時代からの伝統的な施設もあるという。

しかし彼らはキコの送る斬新なデザインをオープンに受け入れ、進んで挑戦してくれるそう。キコの挑戦的で斬新なデザインは、こうした故郷の人々の応援があってこそ形となり、私たちの元まで届いているのだ。

故郷ブルガリアで撮影された「Kiko Kostadinov x ASICS GEL-Kiril 」 ©AnOtherWebsite

多岐にわたる創造の源

また、キコは過去のワークウェアやスポーツウェアからのインスピレーションを好む。例えば、イギリスの伝統的な作業服や、90年代のクラシックなスポーツウェアなど、機能的で実用性のあるスタイルに魅力を感じ、そうした影響を現代的なシルエットやテクスチャに落とし込むのが特徴だ。

彼の作品には、デコンストラクションの手法を使った独特なカッティングや、複雑なパターンワークが施されていることも多い。特に、アシンメトリーやレイヤードスタイルを取り入れることで、独自の雰囲気を醸し出している。

さらに、キコは美術や建築にも強い関心を持っている。アーティストのダン・ヴォー(Danh Vo)の作品や、ブルータリズム建築(打放しコンクリートやガラス等の素材をそのまま使い、粗野な印象の建物のこと)などからインスパイアを受け、彼のデザインに反映させている。

こうした視覚芸術の要素が、彼のコレクションにおいて非凡なシルエットやユニークなテクスチャの表現として現れる。また、素材選びやカラー使いにおいても、工業的な要素やミリタリー要素を巧みに活用し、機能的かつ前衛的な雰囲気を作り出している。

Danh Voの作品の例©white cube

ブルータリズム建築

学生時代から人と違ったことをしたかったキコ。他の生徒が自分のルーツを参照したデザインを提案していたために、最近まで故郷ブルガリアや自分のルーツを参照してデザインをすることはなかったという。しかし近年、ブルガリアや東ヨーロッパの文化や伝統的な要素をしばしば作品に取り入れることにオープンになったそうだ。特にオスマン帝国支配時代の影響や東欧特有の手工芸といった地域的な歴史を尊重しながら、現代的なアレンジを加えている。

このように、Kiko Kostadinovのインスピレーションの源泉は、ブルガリアのルーツ、クラシックなワークウェア、建築やアートに至るまで多岐にわたり、それらが複合的に混ざり合うことで、独自の美学を確立している。

レディースラインを率いるファニング姉妹との出会い

2018年から〈キコ・コスタディノフ〉のレディースラインを牽引する双子のローラ、ディアナ・ファニング姉妹。同級生であるキコと姉ディエナの出会いはセントラル・セント・マーチンズでの講義だったという。(ちなみにキコとディエナは交際中!)

ローラ&ディアナ・ファニング©culted

ローラとディアナ・ファニングはオーストラリア・メルボルンの郊外で、学校の先生である両親の間に双子として生まれた。

彼女たちが初めてファッションに触れたのは、オーストラリアで過ごした幼少期だった。イタリア人ドレスメーカーの大叔母はファッションはガレージ兼スタジオにイタリア版ヴォーグの雑誌を山ほど抱えていたそう。そんな大叔母のもと、姉妹は端切れをつなぎ合わせたり絵を描いたりして、創造的な表現方法を学んだ。

A Conversation with Laura and Deanna Fanning (Kiko Kostadinov)© Paris Fashion Week®

その後ディアナは2013年にロンドンに渡り、キャンバーウェル・カレッジ・オブ・アート(Camberwell College of Arts)のBAニットウェアコースに入学。ローラはメルボルン工科大学(Royal Melbourne Institute of Technology)で学び、2016年にロンドンに移住した。

その後2人はデザイナー・デュオとして名門セントラル・セント・マーチンズのMAファッションコースに入学し、在学中に「ローラ ディアナ ファニング(LAURA DEANNA FANNING)」の名義でコレクションを発表。

その卒業コレクションは2016年、ファッション業界人が一目置く雑誌、『1 Granary』のWebサイトで取り上げられた。インタビューで姉妹は「80年代の大きなボリューム感に強く惹かれる一方で、伝説の写真家、デボラ・ターバヴィル(Deborah Turbeville)の写真に表れる70年代後半のロマンチックな要素にも魅了されている。さらに、美術史を通じて描かれる女性像や特定のシンボル、原型が女性らしさや美学を暗示する仕組みに深い関心を持つ。」と語った。

LAURA DEANNA FANNINGの卒業コレクション2016年©1GRANARY

そんな彼女たちは女性に囲まれて育ち、1960〜70年代のSF映画のパワーウーマンからもインスピレーションを受けているという。彼女たちのデザインは、色や体型を恐れず自分を表現することを重視し、「アグレッシブにフェミニン」なスタイル。

彼女たちは、今も、女性らしさは一概に決めつけられるものではなく、服を通じて自分に心地よくなることを大切にコレクションを作成しているという。

現在の〈キコ・コスタディノフ ウーマン〉のデザインにも、こうした要素が反映されているのを感じられる。

コレクションでたどる〈Kiko Kostadinov〉の歩み

Stüssyとの1回目コラボレーション「Displacement」ー2013

キコ・コスタディノフとストリートウェアレーベル〈Stüssy〉の歴史は、イギリスのスタイリスト兼クリエイティブ・コンサルタントであるステファン・マン(Stephen Mann)がファッションウェブサイト「SHOWstudio」から、ステューシーのロゴを使用したデザイン制作を依頼されたことに遡る。

その中でStüssy UKの中心人物であり、ストリートウェア界で影響力を持つ「ギブミー・ファイブ(gimme5)」の創設者マイケル・コッペルマン(Michael Kopelman)がキコを推薦したことにより、彼がプロジェクトに参加する運びとなった。

キコはこのプロジェクトにおいて、スウェットをリメイクし、独自の手法でステューシーの魅力を引き立てるデザインを創出。同ブランドの象徴的なベーシックなロゴスタイルを一部再解釈したのだ。

このコラボレーションは、CLASH magazineのエディトリアルで発表された。このエディトリアルのために製作されたピースが、キコとステューシーの関係の始まりであり、彼を一躍有名にしたのである。

「Displacement」コレクション©CONSTANT PRACTICE

Stüssyとの2回目コラボレーションー2015

2回目にあたる**2015**年のコラボレーションでは、キコを主導にしてチームが結成された。ステューシーのロンドンコレクション登場35周年を祝う記念すべきコレクションである。

このコレクションは、2013年に発表した「Displacement」コレクションのテーマを引き継いでいる。ローレンス・ウィーナー(Lawrence Weiner)やリチャード・セラ(Richard Serra)のミニマリズム彫刻からインスピレーションを得たものである。

アイテムは、クルーネックシャツ、スウェットパンツ、フーディといったステューシーの定番品を基盤としており、ダメージ加工が施され、ミスマッチなデザインがコレクションに独特の美学を加えている。

インスピレーション源であるセラの工業的製造へのこだわりと素材に対するアプローチは、彼のデザインにも反映されているという。コレクションタイトルである「Displacement」は、キコがステューシーのアイテムを再構築する過程も表している。

文字通り、布地のパネルを切り取り、ずらして再構築することで、完成したデザインに制作プロセスが現れるようにしたのだ。ステューシーのロゴは、ドットだけを残してもわかるくらい認識しやすいため、一番最初に浮かんできたアイディアはそのロゴをめちゃくちゃにすることだったという。

Stüssyとの2回目コラボレーション2015年©INVENTORY

CSM卒業コレクションにて創業ー2016

CSMの卒業コレクションとして発表されたこの作品は、前年のステューシーとのコラボで見られたブレンドやダメージ加工、ラフな裾のデザインとは一線を画し、より洗練された印象を受ける。

このコレクションには、カーハート(Carhartt)などのワークウェアブランドに見られる美学が反映されながらも、従来の厚手のデニムやダックキャンバスといったフォード主義的な”作業服”に対するストリートウェアの解釈を避けている。ワークウェアの要素を取り入れつつも、一般的なブランドロゴを排除し、制服のような「目立たない」見た目を意図的に取り入れていた。

ネイビー、ペールブルー、グレーといった限られた色合いのパレットを使用し、ミニマルなジャケットやパンツが特徴。シンプルでありながら洗練されたシルエットが、ハイパーテクノロジーな〈Hoka One One〉のランニングシューズとスタイリングされることで、装飾性とミニマリズムのコントラストが際立つモノトーンのルックが多く見られた。

一見シンプルすぎるようにも見えるが、キコはその着用感と機能性に強くこだわり、パンツには7種類の異なるカットを施すなど、細部まで計算されたディテールを取り入れている。10ピースという限定コレクションとして発売された。

Kiko Kostadinov’s MA Collection at Central Saint Martins (via University of the Arts London)©Something Curated

デビューコレクション「00022017」ー2017SS

創業後初のコレクションは6月のロンドンコレクション・メンで発表された。

このコレクションは、2016年のCSMショーと同様に黒、ネイビー、カーキのモノトーンカラーのルックが特徴のコレクションの中でも一際目立ったのが、ダイダイ染が施された「hospital shirt(病院シャツ)」と、長袖のプルオーバーである。これは、キコが父に教わった防音技術(布を木枠にホッチキスで留める)にインスパイアを受け染色したアイテムだという。

Kiko Kostadinov Men’s Spring 2017 ©︎WWD

hospitalshirt©ZSC

マッキントッシュと長期的なコラボー2017

イギリスを代表するブランド、マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)とキコによる長期的なコラボレーションがスタート。2017年に第一弾となるコレクション「0001」を発表し、2024年までに4回実施されており、1823年創業の老舗が培ってきた技術と伝統、そしてキコの新しいデザインが見事に調和したコレクションとなっている。

このコレクションは、1960年代のイタリアの芸術運動「アルテ・ポーヴェラ」にインスピレーションを受けた10着のユニセックスなプレタポルテで構成されている。ミニマルで機能性が高く、黒を基調とし、ワークウェアのアクセントを加えたデザインが特徴である。素材には、マッキントッシュの長い歴史を象徴する素材である「ラバー」が巧みに使用されている。

マッキントッシュの特徴である袖口や裾のラバーは、風が吹いても形が崩れないよう設計されており、キコはその機能を活かし、装飾だけでなく実用性を重視したロジカルなデザインを展開。同時にデジタル技術に頼らず、インダストリアルなアプローチによる”粗さ”に魅力を見出し、素材そのものに焦点を当てた。こうして、伝統的な技術と新たな表現が融合したコレクションが誕生した。

「0001」コレクション©MACKINTOSH

ASICSとのコラボ「00042018」/ Funny how Secrets Travel」コレクションー2018

このコレクションで、スポーツシューズ大手アシックス(ASICS)との継続的なコラボレーションを開始した。発表された「Gel-Burz 1」「GEL-DELVA 1」スニーカーは大きなセンセーションを巻き起こし、発売から数分で完売。

スポーツとファッションを融合させたハイブリッドなデザインが注目を浴びる。

「GEL-Nimbus 20」と「GEL-Venture 6」の要素を取り入れつつ、新しいデザインに昇華。アッパーには透明なPU レイヤーが追加され、多層ソールユニットには、従来よりも55%軽量化されたミッドソール(FlyteFoam)と新しい足底の衝撃緩衝材(GELクッション)が装備されている。

「Gel-Burz 1」©Viacomit 

GEL-DELVA 1©HYPEBEAST

コレクション全体を通して色調はモノトーンで、病院、手術などを彷彿させる衣装、無気力でドライな「アメリカン・サイコ感」が特徴。

また、このコレクションにスタイリストとして参加した、ロンドンの著名なスタイリストであるスティーブン・マン(Stephen Mann)のスタイリングにも注目したい。モデルは全員、鼻と目をストッキングで覆っており、1986年の「映画刑事グラハム/凍りついた欲望(MANHUNTER)」の悪役フランシス・ダラハイドを思い出させるようなスタイリングである。コレクション内の衣装にもこのキャラクターの名前を使用している。

©︎VOGUE

「映画刑事グラハム/凍りついた欲望(MANHUNTER)」©SLANT

「00042018」/「Obscured by Clouds」ー2017AW

キコの2018年AWコレクション「00042018 Obscured by Clouds」は、デザイナーのこれまでのビジュアル言語に新たな暖かさと質感を加えた。

従来のワークウェアの枠を超えることを目指し、黒、ネイビー、グレーといった従来の色調に加え、フォレストグリーンや黄土色などのアースカラーが取り入れられた。これらは彼の故郷であるブルガリアを思い起こさせるような伝統的な陶器からヒントを得たカラーリングだそう。さらには青や赤の現職まで取り入れられ、これまでのコレクションでは見られなかった装飾性への挑戦ではないかと囁かれた。

「00042018 Obscured by Clouds」コレクション©VOGUE

このコレクションでは、スペインのシューズブランドであるカンペール(Camper)とのフットウェアコラボレーションが初披露されたほか、2度目となるアシックスとのスニーカーおよび衣料品のコラボレーション、さらに初のウィメンズウェアの試みが発表された。

カンペールとの初コラボシューズは、アシックスとのプロジェクトとは異なる方向性を持つ。1990年代の分厚いハイキングシューズを彷彿とさせるこのシューズは、ゴアテックス、ラバー、レザー構造を採用し、ハイキングスタイルのシルエットにボリュームのあるソールを融合させている。

カンペールとのコラボシューズ©CAMPER

一方、アシックスとのコラボスニーカー「ゲルバーズ2」はランニングシルエットを保ちつつ、アースカラーで展開。レギンスやボディコントップスと合わせて紹介された。(これらのパートナーシップによる要素は、ショーの中でさりげなく取り入れられ、コレクション全体の統一感を高めた。

アシックスとのコラボスニーカー©FASHION HEADLINE

レーベル AFFIXの立ち上げー2018

この年アンドレアス・コスタディノフはタロ・レイ(Taro Ray)、ステファン・マン(Stephen Mann)、マイケル・コペルマン(Michael Kopelman)とともに、ワークウェアを再解釈したブランド「AFFIX」を立ち上げた。

元は海賊ラジオ放送局「Know-Wave」のラジオ番組として始まったが、2018年秋冬シーズンより本格的にロンドン発のファッションレーベルとして始動した。

“New utility” をコンセプトに掲げ、日本のユニフォームやワークウェアをベースにデザイン。従来のワークウェアの理想を追求しつつ、日常着としての実用性を融合している。Tシャツやパーカー、キャップといったカジュアルなアイテムから、ワークウェア風のパンツやジャケットまで、多彩なプロダクトを展開中。価格帯もキコのメインラインに比べて手頃だ。

AFFIXのコレクション©AFFIX

メンズコレクション「Interviews by the River」ー2019SS

このコレクションでは独特のデザイン要素を継承しつつ、新たな方向性を示した。アシンメトリーな縫い目や複雑なパターン、微細なディテールへのこだわりはそのままに、これまでのカラーパレットが一新され、より明るく豊かな色彩が取り入れられている。

「Interviews by the River」©WWD

ドイツの芸術家、マーティン・キッペンバーガー(Martin Kippenberger)のインスタレーション「フランツ・カフカの”アメリカ”のハッピー・エンド(The Happy End of Franz Kafka’s ‘Amerika’ )」(1994年)から着想を得た鮮やかな色彩がコレクションを彩っている。

パステルグリーン、ラベンダー、アプリコットといった柔らかな色合いに加え、アシックスのハイビズオレンジ色のトラックスーツが目立った。

「フランツ・カフカの”アメリカ”のハッピー・エンド(The Happy End of Franz Kafka’s ‘Amerika’ )」(1994年)©FRIEZE

また、コレクション全体を見ると豊かな質感にあふれている。チュニックのような形状やふくらんだボトムス、テクニカルウェアの上に重ねられた柔らかな生地、さらにブルガリアのカーペットから着想を得たパターンなど、実験的かつ調和の取れたスタイルが特徴である。

これらの要素が融合することで、「Interviews by the River」はコスタディノフのクリエイティビティの新たな一面を示すコレクションとなった。

ウィメンズコレクションー2019ss

ローラ、ディアナ率いるウィメンズラインチームのデビューコレクション。

このコレクションは、ネオンや輝きのフレックが散りばめられた衣装をまとい、カオスと化した警報音や砕け散る音の中を闊歩するモデルたちによって、新時代のSF映画を見ているかのようだと評価された。フォルムを強調しながらも実用性を備えたデザインは、迫り来る破滅に立ち向かう準備が整っているように感じられた。カンペールのヒールに施された鮮やかなイリデッセントカラーは、世界の混沌を紛らわす美しい錯覚のような役割を果たしている。

コレクション全体に漂うディストピア的要素は、ファニング姉妹がオルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』から着想を得たことに由来している。

彼女たちのデザインする女性像は、未知の未来に立ち向かい困難を乗り越えるための衣服を纏う。ディアナは「昔読んだときはあまりピンとこなかったが、再読してみると恐ろしいほど現実とリンクしている部分が多い」と語っている。

このコレクションは、ファニング姉妹とキコ・コスタディノフの特徴が絶妙なバランスで融合した傑作であったと賞賛された。

2019ss ウィメンズコレクション ©️WWDJAPAN

レディースコレクション-2021aw

このコレクションで、ブランドのシグネチャーバッグとなった「Trivia Bag」が初登場。このバッグは、斜めに歪んだトロンプ・ルイユ(目の錯覚を利用した騙し絵)効果のあるクラシックなバゲットシルエットが特徴的で、瞬く間に注目を集めた。アイリス・ロー(Iris Law)やベラ・ハディッド(Bella Hadid)が街中でこのバッグを持っている姿も目撃されている。

Trivia Bag©hypebae

Bella Hadid©MINGS

全体的には、メンズラインが持つ実験的かつテクニカルなデザイン哲学をベースにしつつ、女性らしい感性が加わった作品が展開された。彫刻的なフォルムと流れるようなラインが特徴で、シャープな構造と柔らかなテクスチャーの対比が際立っている。使用された素材にはコーデュロイやサテンが多く、視覚的なインパクトと共に着心地にも配慮されている。カラーはパステルやアーストーンを基調とし、控えめながらも洗練された印象を与えた。

Kiko Kostadinov A/W 21 Womenswear ©︎SHOW studio

メンズ・ウィメンズコレクション-2024AW

このコレクションは、メンズ、レディース双方において、機能性とスタイルを見事に融合させた革新的なデザインが特徴だ。

パリ・ファッションウィークで発表されたメンズウェアは、アシンメトリーなテーラリングや技術的なディテールが目を引く。特に、曲線的なヘムラインやダイヤモンド型の刺繍、脱着可能なポーチがアクセントとなっており、トラックスーツにネクタイを組み合わせるなど、遊び心を感じさせる要素も加えられている。

また、リーバイスとのコラボレーションにより、パンク的なデニムジャケットが登場し、コレクションに一層の現代的な都市感を与えている。

2024awメンズコレクション©WWD

一方、ウィメンズコレクションは、アウトドアスタイルとY2Kの要素を融合させた、冒険心とファッション性を兼ね備えたデザインとなっている。特にコーティングされたコットンやベルベット、コーデュロイなど、素材感を楽しめる一方で、伝統的なウェリントンブーツをモダンにアレンジしたスタイルが印象的だ。これにより、機能性とスタイルを両立させたシンプルかつ洗練された装いが完成している。さらに、スウェードとグリーンレザーを使った「MEZLARI bag」も登場し、丈夫でありながら洗練されたデザインが加わった。

2024AWウィメンズコレクション©SHOWstudio

MEZULARI bag ©KIKO KOSTADINOV

おわりに

キコ・コスタディノフは、型にはまらない発想と幅広いインスピレーションをもとに、機能性と美しさを兼ね備えたデザインを生み出し続けている。その作品は、伝統と現代性、実験的な美学を巧みに融合させ、多くのファッション愛好家を魅了。彼のブランドがこれからどのような進化を遂げるのか、そしてその独自性がさらにどのように深化していくのか、目が離せない。

Reference